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■市民パワー

■市民パワー 

■NGOの存在感!
 こちらで一番感激したことは、NGOの存在感である。授業中でも、日々の生活でも、国連でも、常に驚かされている。
 環境だとか人権だとか平和だとかについて何かが決まる時、そこにはNGOがある。経済や融資などについても、国連レベルで何かが決まるときには、そこにもほぼ間違いなくNGOがある。
ものすごい変化である。国際社会ではずっと登場人物は国家だけだった。条約を結んだり、そのための交渉したり、は、国家にしかできず、私たち市民には当事者適格がなかった。しかし、国際政治の現場でそれが変わりつつある(いわゆるNGO(Non Government Organization=市民団体)だけでなく、企業も大きな影響力ではあるが)。
 日本では、NGOはなんだか狭くてオシャレではないオフィスにボランティアが肩を寄せ合いながら活動をし、政府もマスコミも相手をしてくれなくて、頑張っても報われない・・・みたいな感じだが(失礼!でも、こちらのNGOの強大さに比べたら、そうとしか言いようがない。)、アメリカでは、マスコミでも国会議員でも何かにつけて、「アムネスティ(世界最大の国際人権NGO)によれば・・・」である。

■国際刑事裁判所の締約国会合の場にて
 NGOの力を痛感したのは、前回ご紹介した国際刑事裁判所の締約国会議の場である。Coalition for ICC = CICC(国際刑事裁判所のためのNGO連合)が、全てのNGOをとりまとめ、政府へのロビーイングを大展開し、会議の議事録をとり、配付資料を集めて即座にホームページに掲載していた。
 国連に加盟できるのはもちろん「国」しかない。締約国会議の当事者も国である。しかし、加盟国が、国名の書いてある席に座る中、NGOも「Non Governmental Organization」と書いた名札の席につく。(あふれた人はその回りに座る。)議場入り口には、NGOの資料が山と積まれており、みな次々手にしていく。CICCは、各議題にそってペーパーを用意し、それを一読すると「現時点の問題点は何か」が一目瞭然である。
 CICCの目的は、国際刑事裁判所を設立し、世界の国々に批准させ、ICCを実際に意味あるものとしていくことである。セントルイスとか、カーボヴェルデとか、それはいったい全体どこにある国なのか、本人に説明を聞いても場所がなかなか思い出せないような(ごめんなさい!)国からもNGO代表者がきていた。担当者が随時変わる各国政府代表よりも、この問題だけを追い続けているCICC担当者の方が情報に詳しくなるであろうし、世界中の2000のNGOの連合体であるから、そんじゃそこらの国よりは影響力もある。
 締約国会議では、NGOも30分の時間をもらって発言を許されていた。CICC、アムネスティ(AI)、ヒューマン・ライツ・ファーストと名だたる人権NGOが、持ち時間5分で次々報告をした(国連加盟国は192カ国もあるため国の持ち時間も同様に短い)。
 締約国会議開催の2週間、ほぼ毎日CICC主催のイベントが開かれた。地域ごとに政府を招いての意見交換会、被害者の権利などの問題点ごとのセッションなど。以前は、どの政府もうるさいNGOは嫌いであったろうし、得体の知れない市民の集まりであるNGOを相手にする必要はないという姿勢であったろうと思う。しかし、現在ではその存在を無視できず、政府もNGOミーティングに参加する。今回、アジア・太平洋セッションには、我が日本政府が初めて顔を見せた。大変うれしいことである。日本のNGOからの参加者(私ともう一人)は、ほっと安堵し顔を見合わせた。
 夜にはNGO主催のレセプションが開かれ、ICCからも主席検察官を初め多くのスタッフが参加し、また、政府からも、驚くほどの参加者があった。こんなに多くの国が来ているのだから「日本政府も来てくれないと恥ずかしいよーーー。」と祈っていたら、当選したばかりの齋賀裁判官自ら他の代表団と共に現れ、私たちはまたまたほっとした。齋賀さんとお話しすると「NGOも政府も目的が同じなのだから、お互いに、もっと協力してやっていけるといいわね」。・・・本当にそうですよ。どうかお願いいたします。
 CICC会合の最後には、アジアのNGOのメンバーが部屋の隅に集まり、「今年は日本が批准したから、後が続くように頑張ろう!」「ウェブ上でアジアのNGOをつなごう」と話し合って別れた(中国からのCICCへの出席者は、なんと、中国の元最高裁判事!)。

■大学の授業で
 これは、一例に過ぎないが、国連の少なくない会議で同じようなことが展開されていると聞く。WTOの会議では、反グローバリズムのNGO行動が、開会式を中止に追い込んだりもしている。国際政治学を学ぶと、国家がいかにNGOを無視できなくなってきているかを実感する。何度、国際政治の授業の中でNGOの名前を聞いたことか。環境NGOグリーンピース、開発NGOオックスファム、人権NGOアムネスティ(AI)やヒューマンライツウォッチ(HRW)などなど。
 人権クリニックという授業の中では、「AIとHRWの手法を比較し、利点と欠点を指摘せよ」とかいうテーマで議論をした。日本では、「NGOって何?」とか、「アムネスティってなんだ?」という質問を受けかねないのに・・・。

■日本では
 私はアムネスティ日本の会員で、ボランティアを10年間続けてきた。最後には、名前だけでも「総会議長」という肩書きをもらって4年間すごした。この10年間であっという間に、世界中のアムネスティの会員は100万人から220万人になり(約150カ国!)、ロンドンの本部のスタッフも200人と聞いていたのが500人になったとか。9.11以後、会員がみるみる増えたとのこと。戦争ばかりでうんざりの世界の状況に、「何かしたい!」人が激増したのだろう。
 これに反して、日本支部は、10年前は1万人近くいた会員が今は約半分、職員は非専従を入れても10名である。アムネスティUSAの会員36万人、スタッフ165人と比べると、いかに悲しい数字であるかがよく分かる(アメリカの人口は日本の2倍強、同じ比率で会員がいるとすると日本には17万人近くの会員がいて良いことになる・・・)。
 この10年間、日本でもNGO活動は一部発展してきていると思う。外務省と国際NGOの意見交換の場が、定期的に設けられるようになったりしている。しかし、アムネスティ日本の現状に象徴されるように、特に、人権関連のNGOの参加者の広がりは、日本社会の右傾化に伴って、残念ながら下り坂のように思う。
 アメリカで「アムネスティ日本の総会議長でした」と自己紹介すると、人権の授業を選択する学生はあこがれのまなざしに変わるのだが、日本の現状を説明すると、みな???マークでいっぱいの顔になる。なんで、「世界のアムネスティ」なのに、日本ではそんなにNGOが形見を狭くしているの?と。

■これから
 私は渡米後アメリカ最大のNGOであるHRWでインターンを開始し、卒業後1年間、HRWで働くことになっている。世界最大級のNGOがどんな動きを作り出しているのか。日本にその術を持ち込めるのか、盗み出したいことは山のようにある。
 聞いてはいたが、この世界での、NGOの存在感を自分で目の当たりにすると、私たち一人一人の可能性の大きさを感じてわくわくしてたまらない。
 日本の市民社会は、この間の日本社会の恐怖なまでの右傾化など、ブルーになることも多いんだけれども、そして、なんで日本がこうなのか全くわからないんだけれども、・・・でも、広い視野で見ると、世界中の市民はめちゃめちゃ元気で、その流れは誰かが止めようとしたって止められないところまできている。これには本当にわくわくする。
 もっとも、2008年。日本でのNGOの力強さを見るチャンスが、実はたくさんある。洞爺湖サミットに対するNGOフォーラムの動きも楽しみだし、なんといっても5月には「9条世界会議!」も開かれる。ノーベル平和賞受賞者などがあつまって「憲法9条ってすごくない?」ってな大大イベントやります!みなさま、お見逃しなく!http://whynot9.jp/
(2008年 「まなぶ」 2月号掲載)

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「アジア・パシフィック政府・NGOミーティング、初めて日本政府が参
加した!」

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「議場前の資料・皆立ち寄って手にしていく」

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「NGO席に座るNGO関係者たち」

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「NGOセッションにICCの裁判所書記(事務方の長・現在のICC一番の権力者?)が出席し、丁寧にICCの現状を説明した。写真は紹介されたICCの法廷内部の様子。NGOへの説明も国際機関の大事な仕事・・・」

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「アジアのNGO代表で集合。インドネシア、フィリピン、中国、ベトナム、中国、日本・・・」

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「齋賀裁判官とお話ししました。是非とも、日本でもNGOとの交流を!」


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