Main | June 2005 »

■■背筋が凍る ~表現の自由はどこへ?

今回は、表現の自由について、日の丸君が代について、そして私も弁護団に参加している板橋高校の元先生の事件について下記に拙稿をご紹介させて頂きます。なお、この事件は
現在刑事裁判になっておりますので公判傍聴へ多くの方においでいただければ幸
いです。

 5月30日(月)10:00~16:30  第3回公判
                     (東京地裁104号法廷)
 6月21日(火)10:00~16:30  第4回公判
                     (東京地裁104号法廷)
 7月19日(火)10:00~16:30  第5回公判
                     (東京地裁425号法廷)

■■背筋が凍る ~表現の自由はどこへ?

1 高校校門前の公安警察の列
   権力の暴走が止まらない。
   この春、東京都立高校の卒業式では、校門前に公安警察が並び(少なくともビラまきを行った50校のうち37校で)日の丸君が代強制に反対の人々のチラシ撒きを妨害した。警察が「今日は住居侵入または道交法で必ず逮捕するから覚悟しておけ」などと市民を脅迫などしたため、のべ70人以上の弁護士が各式の校門前で警察を監視した。弁護士のいなかった2校では住居侵入罪で2名が逮捕された(構成要件該当性なく一件は勾留請求却下・一件は勾留請求できず)。また、弁護士を10人以上の警官で取り囲み「卒業式なんか関係ねえんだよ」「表現の自由なんて関係ねえんだよ」「(テープを)撮ったから、いつでも(弁護士を逮捕)できるぞ」と暴言を吐く場面もあった。

2 日の丸君が代強制政策
   都教育委員会から、2003年10月23日、「日の丸君が代強制通達」が出された。日の丸を卒業式の壇上に掲揚し教職員がそれに向かって正対して君が代を斉唱することを中心に、会場の設営方法、教職員の服装に至るまで細目が定められた。実際の式には都の職員が派遣され、所定の位置に日の丸が掲げてあるか、職員が起立して歌っているかをチェックする。起立しなかった職員は戒告・減給処分となりひいては職を失う。昨年,不起立で処分された教職員は250名を超え,今年も50名を超えた。この強制の動きは全国に広がり、君が代斉唱時の生徒の声の大きさを測る所もある。
   1999年の国旗国歌法制定当時は、首相自ら「強制はしません」としたにもかかわらず、現実は、教職員のみならず「歌わなければ先生を辞めさせる」という強制をもって生徒の良心の自由も奪っている。本年、ある高校では、卒業生が都教委に対し「これ以上もう、先生たちをいじめないで」と卒業式で訴えた。

3 強制はついに刑事起訴まで
   強制は刑事事件にまで発展している。私も弁護団に参加する威力業務妨害事件である。都立板橋高校の元教諭であった藤田勝久氏が、2004年、教え子の卒業式に出席した際、開式前生徒も入場しておらず保護者らが順々に来校し席を埋めていく間に、保護者に向かって「国歌斉唱の時は出来たら着席をお願いします」等話したことが威力業務妨害であるとされた。保護者に話しかけ、教頭に声をかけられてすぐに退出した藤田氏は「教頭・校長がこの言動を制止し退場を求めたのに従わず,怒号して会場を喧騒状態に陥れた」と起訴された(起訴状より)。

   公判で証拠採用された卒業式撮影ビデオでは、卒業式が式次第に従ってスムーズに進行していることが写っている。当日参加した保護者も「立派な卒業式だった」と感想を述べており式の妨害は存在しない。
   ただ1つこの板橋高校の卒業式に変わっていた点があるとしたら,君が代斉唱時に生徒の9割以上が「不起立」だったことである(なお、藤田氏の呼びかけの際、生徒らはまだ入場していなかった)。卒業式後の東京都議会で都教育長が土屋都議の質問に答える形で本件に関し法的処分をとると明言し,大量の警察官が板橋高校に押しかけ長時間にわたり関係者の供述を聴取し,高校と都教委を被害者とした被害届が「建造物侵入罪」で出された。調書の多くは警視庁公安部による。これは都教委と公安警察が一体となって作り出した犯罪なのである。
   藤田氏は、開式前に一言二言保護者に話しかけたにすぎない。これに対し、君が代斉唱時に来賓の土屋敬之都議(君が代日の丸導入の急先鋒)は着席している生徒に対して起立するよう怒鳴りつけ、座っている生徒の姿を携帯電話のカメラで撮影している。

4 立川・葛飾・社会保険庁・・・改憲 
   意見を述べただけで起訴される。
   これは、日の丸君が代強制の問題であり、のみならず民主主義の根幹である表現の自由の問題である。権力による表現の自由の抑圧は、今、途方もなく大きな力で私たちを食いつぶそうとしている。立川・葛飾・社会保険庁職員の各事件など、政府の方針と異なる意見のビラを撒いただけの行為に逮捕・起訴が次々なされているのはご承知のとおりである。
   法改正としての改憲の動きは、現実に私たちの生活への直接的な侵害となって現れ、今回あげた事件以外にも随所にみられ、一連の大きな流れとなって私たちに押し寄せている。
   私たちは、今こそ権力の動きに敏感にならねばならないし、権力に真っ向から立ち向かうことを恐れてはならない。

(自由人権協会・人権新聞へ寄稿)

| | Comments (0)

初めまして

初めまして、憲法行脚の会の事務局長の猿田です。私たちを守ってきた大切な憲
法を変えることなく、これからもさらに憲法を広げて平和な社会で生活していきたいと
強く強く願っています。

今、憲法を変えようという声がありますが、憲法が変わっても自分には関係がな
いと思っていらっしゃる方も少なくないかも知れません。私自身も、憲法のこと
を思い出しながら日々の生活をすることはそうは多くありません。しかし、
憲法に護られて生活しているのだと実感しなければならないような生活は、自分
たちの権利が脅かされているときであり、そのような状態こそ不幸な状態だとい
えるでしょう。

残念ながら、改憲の動きとともに、憲法があって良かったと感じることが現実に
増えてきています。もともと、私は平和問題に関わろうと弁護士になったわけで
はありませんが、いつの間にか憲法にまつわる事件に取り組むことが多くなって
しまいました。あっという間に、男女平等に関する事件、表現の自由に関わる事
件、平和に関する事件に向き合うことになり、ついには、憲法を名前に掲げる
「憲法行脚の会」の事務局長にまでなってしまったのです。自分がこれほど憲法
について取り組むことになろうとは10年前には考えてもみませんでした。

護られてきた憲法を護らねばならない。
今のこの状況は、憲法に護られたままぬくぬくと生きてきた、私のような者が作り
出してしまったのかも知れません。
感謝の気持ちを込めて、憲法を護り、さらに広めるために進んでいければと思っ
ています。

このコラムでは、気の向くまま、私が憲法について感じること、取り組んでいること
をご紹介していきたいと思います。
今後とも、どうぞ皆様、よろしくお願い致します。

2005年5月

憲法行脚の会事務局長
猿田佐世(弁護士)

| | Comments (0)

Main | June 2005 »