大統領選挙をついに街で感じ始めた!

大統領選挙をついに街で感じ始めた!

■アメリカ大統領予備選挙
 今、アメリカの大統領選挙の「予備選挙」が、世界中を騒がせている。予備選挙とは、各党の公認候補を決めるための選挙である。各候補は自分の属する党に大統領候補としての指名をしてもらうために、この予備選挙で勝利しなければならない。
 注目はもっぱら民主党の予備選挙に集まっている。それは、歴史上最悪とも言われるブッシュ大統領に疲れた国民(アメリカ人の友人は口をそろえて”tired”という単語を使う)が、11月の本選挙では共和党ではなく民主党の候補者を選ぶであろうという見方が強いためであり、また、共和党では明らかにマケインが指名を勝ち取りそうだからである。世界中が、バラック・オバマ上院議員と、ヒラリー・クリントン上院議員の一騎打ちに注目している。
 毎週、全米のあちこちの州で予備選挙が行われている。予備選挙は州ごとに行われ、1月3日のアイオワから、6月12日のネブラスカまで、息の長いレースである。どうせなら同じ日に全州がやればいい、と思うのだが、アメリカの州は日本の私たちが思っているよりも独立度が高いからか、みんないっぺんに、とはならないらしい(お金がかかるのに!)。

■スーパーチューズデー前夜
 予備選挙の中でも注目されるのがスーパーチューズデーである。スーパーチューズデーとは、多くの州が予備選挙を行う日のことであり、この日に大統領候補者が決まることも少なくないため、とても注目される。今年は、2月5日がスーパーチューズデーであり、22の州で民主党の予備選挙が行われた。
 3日前の土曜(2月2日)、私は友人に誘われて、オバマのラリーに出かけた。場所は、マンハッタンのど真ん中、セントラルパークの一角。その日のラリーは「Women for Obama」とのことで、オバマ氏本人はいなかったけれど、有名な女性の人権活動家や学生が次々マイクを握って、演説をしたり歌を歌ったりして、オバマ支持を訴えていた。合間にかけ声に合わせ、「We need Change! We need Change!」「Obama! Obama!」と皆が叫び、盛り上がりをみせていた。もっとも、NYでは、ヒラリー氏の優勢が伝えられていたからか、マイナスの寒さであったからか、思ったほどの人出ではなかった。スーパーチューズデーの直前なのに300人くらい?やっぱりNYではヒラリー?

■オバマの街頭演説!!!!
 かく言う私は、生でオバマを拝んだことがある。さかのぼるが昨年9月、オバマがNYに来る!ということで、私は授業をほったらかして演説を聴きに行った。
 演説は、NYのワシントンスクエアパークという中規模サイズの公園で行われた。さっそく、ウェブサイト上から入場券を予約。こちらでは、選挙もネット化されており、当日はWEBのチケットを紙に印刷し、入場制限されている公園の入り口でその紙を見せて入場する。その後、セキュリティチェックの列に並んだ。アメリカだし、危険だし、警備とかきっちりしているんだろうなーーと思いながら、満員電車状態の公園のロープの列の中、お行儀良く待ち続けた。ニューヨーク大学のすぐ隣に位置する公園であることもあってか、参加者は見事に若者ばかり。20代がほとんどで、50才を超えている人は一握り、平均年齢30才以下とも思える集団であった。日本ではそんなことはまずない。なお、その日の最終的な発表では、2万5000人集まっていたらしい(おーい、そんなにいたか??)。
 待つこと2時間、オバマ到着!・・・とたんに皆は興奮して、柵を乗り越え、セキュリティチェックも完全に無視して、だーっとステージに向かって走り出していった・・・今までの2時間は何だったんだ?アメリカの警備はどうなっているんだ?・・・みな自由奔放にオバマのいる舞台に走り寄っていった。・・・私も、負けじと走って、かろうじて、オバマが遠くに見え隠れする位置を確保し演説を聴いた。
 彼はとにかく演説がうまい!その演説のうまさ、カリスマ性には驚嘆する。イラク撤退から社会保障から、聴衆に学生が多いことを見越しての学費の値下げ(急増している。この10年間でコロンビアロースクールの学費は年間約2万5000ドル(約300万円弱・1997年度)から約4万5000ドル(約500万円弱・2007年度)となった(怒!))まで、幅広いテーマについて、極めて歯切れ良く簡潔に訴え、最後は、みなを盛り上げて、「Let’s change the world! 」で終わった。ファンでなくても、陶酔する圧倒的な雰囲気であった。

■スーパーチューズデー さて、話を戻そう。2月5日、スーパーチューズデー当日は、駅前などで、OBAMAなどと名前の書いたジャケットを着て「オバマに投票を!」「ヒラリーに!」と熱心に呼びかけている人がおり、私はその都度に「私はアメリカ人じゃないんです」と答えざるをえなかった(こちらでは、外見では区別がつかないので私も声をかけられる)。
 夜、カフェやバーを借り切って、開票速報を皆で見るイベントが学生団体により行われた。さながら日本でのサッカーのワールドカップ観戦である。大きなスクリーンを囲み、速報が進む度に歓声やどよめきが上がった。共和党も予備選挙をやっているが、学生の会話は民主党についてばかりであった。激しく盛り上がるのは、ある州でオバマが勝ったとの報道が流される時であった。
 オバマは特に若者からの支持が厚い。さらに、コロンビアが一応はリベラルと評されている大学だからか、オバマがコロンビア大学の卒業生であるからか、その場で圧倒的な人気であった。NY州はヒラリーの地盤であり、最終的にもNYの予備選ではヒラリーが大差をつけて勝っている。弁護士を目指す若者が集まるロースクールというのは、リベラルな集団なのであろうか。
 もっとも、私が親しくなるアメリカ人は、同じ授業(人権関連科目)を取っていたり、社会問題に興味がある人ばかりである。・・・従って、気づいてみたら私の周りのアメリカ人は皆オバマファンばかりであった。相当熱烈なファンもいて、オバマバッグを買い求め、毎日、コートの胸にオバマワッペンを貼っているとてもかわいい女の友人もいる。アメリカ版ミクシー(face book といいます)の自己紹介欄に、「大好きな人:OBAMA」と書いている子もいる。スーパーチューズデーまでは、みんなして、「オバマきっと無理よね」「大丈夫かしら」と心配していたが、このところの快進撃にみんな笑顔を取り戻している。
 もっとも、アメリカの大統領選の興奮はまだまだで、まだ「町が大統領選で大騒ぎ」というほどにはなっていない。アメリカ人学生たちは大統領選挙の話をしてはいるが、やっと最近、地下鉄などでオバマバッチに気がついたり、学生のロッカーにステッカーが貼ってあるのに気がつくようになった程度である(もっとも、いろんなグッズが売っており、犬に着せるオバマ服まで売っているらしいが。)とはいえ、まだ、選挙は始まったばかりで、今の時期から大興奮になっていては11月の本選挙までもたないのであろう。

■あれこれお国事情
 一大新聞であるNYタイムズが、ヒラリーとマケインを支持すると決定。日本では、大手メディアが名指しで候補者の支持を表明することはまずないのではないかと思うので、すこしとまどった。NYタイムズはスーパーチューズデーの前日に、ヒラリーとオバマの政策の違いについて記事を載せ、「唯一の違いである社会保険制度改革はヒラリーの方がこんなに優れている」と大々的に掲載した。NYという大票田で、投票日前日のこの記事は大変な影響力であろう。
 選挙におけるネットの利用もものすごい。私が一度オバマ選挙演説に参加してからというもの、3日とおかずオバマ陣営からE-mailが送られてくる。YOU-TUBEにも、候補者の支援の演説やら歌やら踊りやらがたくさんアップされている。今回の選挙はYOU-TUBE選挙とも言われたりするようだ(例えば http://www.barelypolitical.com/)。
 などなど・・・。選挙についての情報は日本語でも英語でもあふれまくっているし、事態は時々刻々変わっていく。従って、全体像の解説などはとてもできないが、これからも、現地で体験した町の反応を時折お伝えしていく。
 そして、日本での若者の政治離れの解明を少しでもできたら、等と思っている。日本でもいつの日か、20代の若者が詰め掛けた満員の居酒屋で開票速報を囲んで盛り上がる、とか、平均年齢30歳の2万5000人が政治家を囲んで公園を埋め尽くす、とか、そんな日が来ることを祈って・・・。
                        (2008年 「まなぶ」 3月号掲載)


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「We Need Change!」「We Need Change!」ラリーの盛り上がり

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「Girls for OBAMA.....」

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「私の見た生オバマ」

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グッズを購入。グッズをつけている人をちらほら見かけるようになりました。

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オバマバッジ購入!

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散歩のついでにオバマだワン(オバマ服はまだ買ってもらってないのね・・・)。

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■市民パワー

■市民パワー 

■NGOの存在感!
 こちらで一番感激したことは、NGOの存在感である。授業中でも、日々の生活でも、国連でも、常に驚かされている。
 環境だとか人権だとか平和だとかについて何かが決まる時、そこにはNGOがある。経済や融資などについても、国連レベルで何かが決まるときには、そこにもほぼ間違いなくNGOがある。
ものすごい変化である。国際社会ではずっと登場人物は国家だけだった。条約を結んだり、そのための交渉したり、は、国家にしかできず、私たち市民には当事者適格がなかった。しかし、国際政治の現場でそれが変わりつつある(いわゆるNGO(Non Government Organization=市民団体)だけでなく、企業も大きな影響力ではあるが)。
 日本では、NGOはなんだか狭くてオシャレではないオフィスにボランティアが肩を寄せ合いながら活動をし、政府もマスコミも相手をしてくれなくて、頑張っても報われない・・・みたいな感じだが(失礼!でも、こちらのNGOの強大さに比べたら、そうとしか言いようがない。)、アメリカでは、マスコミでも国会議員でも何かにつけて、「アムネスティ(世界最大の国際人権NGO)によれば・・・」である。

■国際刑事裁判所の締約国会合の場にて
 NGOの力を痛感したのは、前回ご紹介した国際刑事裁判所の締約国会議の場である。Coalition for ICC = CICC(国際刑事裁判所のためのNGO連合)が、全てのNGOをとりまとめ、政府へのロビーイングを大展開し、会議の議事録をとり、配付資料を集めて即座にホームページに掲載していた。
 国連に加盟できるのはもちろん「国」しかない。締約国会議の当事者も国である。しかし、加盟国が、国名の書いてある席に座る中、NGOも「Non Governmental Organization」と書いた名札の席につく。(あふれた人はその回りに座る。)議場入り口には、NGOの資料が山と積まれており、みな次々手にしていく。CICCは、各議題にそってペーパーを用意し、それを一読すると「現時点の問題点は何か」が一目瞭然である。
 CICCの目的は、国際刑事裁判所を設立し、世界の国々に批准させ、ICCを実際に意味あるものとしていくことである。セントルイスとか、カーボヴェルデとか、それはいったい全体どこにある国なのか、本人に説明を聞いても場所がなかなか思い出せないような(ごめんなさい!)国からもNGO代表者がきていた。担当者が随時変わる各国政府代表よりも、この問題だけを追い続けているCICC担当者の方が情報に詳しくなるであろうし、世界中の2000のNGOの連合体であるから、そんじゃそこらの国よりは影響力もある。
 締約国会議では、NGOも30分の時間をもらって発言を許されていた。CICC、アムネスティ(AI)、ヒューマン・ライツ・ファーストと名だたる人権NGOが、持ち時間5分で次々報告をした(国連加盟国は192カ国もあるため国の持ち時間も同様に短い)。
 締約国会議開催の2週間、ほぼ毎日CICC主催のイベントが開かれた。地域ごとに政府を招いての意見交換会、被害者の権利などの問題点ごとのセッションなど。以前は、どの政府もうるさいNGOは嫌いであったろうし、得体の知れない市民の集まりであるNGOを相手にする必要はないという姿勢であったろうと思う。しかし、現在ではその存在を無視できず、政府もNGOミーティングに参加する。今回、アジア・太平洋セッションには、我が日本政府が初めて顔を見せた。大変うれしいことである。日本のNGOからの参加者(私ともう一人)は、ほっと安堵し顔を見合わせた。
 夜にはNGO主催のレセプションが開かれ、ICCからも主席検察官を初め多くのスタッフが参加し、また、政府からも、驚くほどの参加者があった。こんなに多くの国が来ているのだから「日本政府も来てくれないと恥ずかしいよーーー。」と祈っていたら、当選したばかりの齋賀裁判官自ら他の代表団と共に現れ、私たちはまたまたほっとした。齋賀さんとお話しすると「NGOも政府も目的が同じなのだから、お互いに、もっと協力してやっていけるといいわね」。・・・本当にそうですよ。どうかお願いいたします。
 CICC会合の最後には、アジアのNGOのメンバーが部屋の隅に集まり、「今年は日本が批准したから、後が続くように頑張ろう!」「ウェブ上でアジアのNGOをつなごう」と話し合って別れた(中国からのCICCへの出席者は、なんと、中国の元最高裁判事!)。

■大学の授業で
 これは、一例に過ぎないが、国連の少なくない会議で同じようなことが展開されていると聞く。WTOの会議では、反グローバリズムのNGO行動が、開会式を中止に追い込んだりもしている。国際政治学を学ぶと、国家がいかにNGOを無視できなくなってきているかを実感する。何度、国際政治の授業の中でNGOの名前を聞いたことか。環境NGOグリーンピース、開発NGOオックスファム、人権NGOアムネスティ(AI)やヒューマンライツウォッチ(HRW)などなど。
 人権クリニックという授業の中では、「AIとHRWの手法を比較し、利点と欠点を指摘せよ」とかいうテーマで議論をした。日本では、「NGOって何?」とか、「アムネスティってなんだ?」という質問を受けかねないのに・・・。

■日本では
 私はアムネスティ日本の会員で、ボランティアを10年間続けてきた。最後には、名前だけでも「総会議長」という肩書きをもらって4年間すごした。この10年間であっという間に、世界中のアムネスティの会員は100万人から220万人になり(約150カ国!)、ロンドンの本部のスタッフも200人と聞いていたのが500人になったとか。9.11以後、会員がみるみる増えたとのこと。戦争ばかりでうんざりの世界の状況に、「何かしたい!」人が激増したのだろう。
 これに反して、日本支部は、10年前は1万人近くいた会員が今は約半分、職員は非専従を入れても10名である。アムネスティUSAの会員36万人、スタッフ165人と比べると、いかに悲しい数字であるかがよく分かる(アメリカの人口は日本の2倍強、同じ比率で会員がいるとすると日本には17万人近くの会員がいて良いことになる・・・)。
 この10年間、日本でもNGO活動は一部発展してきていると思う。外務省と国際NGOの意見交換の場が、定期的に設けられるようになったりしている。しかし、アムネスティ日本の現状に象徴されるように、特に、人権関連のNGOの参加者の広がりは、日本社会の右傾化に伴って、残念ながら下り坂のように思う。
 アメリカで「アムネスティ日本の総会議長でした」と自己紹介すると、人権の授業を選択する学生はあこがれのまなざしに変わるのだが、日本の現状を説明すると、みな???マークでいっぱいの顔になる。なんで、「世界のアムネスティ」なのに、日本ではそんなにNGOが形見を狭くしているの?と。

■これから
 私は渡米後アメリカ最大のNGOであるHRWでインターンを開始し、卒業後1年間、HRWで働くことになっている。世界最大級のNGOがどんな動きを作り出しているのか。日本にその術を持ち込めるのか、盗み出したいことは山のようにある。
 聞いてはいたが、この世界での、NGOの存在感を自分で目の当たりにすると、私たち一人一人の可能性の大きさを感じてわくわくしてたまらない。
 日本の市民社会は、この間の日本社会の恐怖なまでの右傾化など、ブルーになることも多いんだけれども、そして、なんで日本がこうなのか全くわからないんだけれども、・・・でも、広い視野で見ると、世界中の市民はめちゃめちゃ元気で、その流れは誰かが止めようとしたって止められないところまできている。これには本当にわくわくする。
 もっとも、2008年。日本でのNGOの力強さを見るチャンスが、実はたくさんある。洞爺湖サミットに対するNGOフォーラムの動きも楽しみだし、なんといっても5月には「9条世界会議!」も開かれる。ノーベル平和賞受賞者などがあつまって「憲法9条ってすごくない?」ってな大大イベントやります!みなさま、お見逃しなく!http://whynot9.jp/
(2008年 「まなぶ」 2月号掲載)

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「アジア・パシフィック政府・NGOミーティング、初めて日本政府が参
加した!」

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「議場前の資料・皆立ち寄って手にしていく」

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「NGO席に座るNGO関係者たち」

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「NGOセッションにICCの裁判所書記(事務方の長・現在のICC一番の権力者?)が出席し、丁寧にICCの現状を説明した。写真は紹介されたICCの法廷内部の様子。NGOへの説明も国際機関の大事な仕事・・・」

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「アジアのNGO代表で集合。インドネシア、フィリピン、中国、ベトナム、中国、日本・・・」

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「齋賀裁判官とお話ししました。是非とも、日本でもNGOとの交流を!」


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国連での国際会議!

国連での国際会議!

 NYには国連本部がある。そのため国連の会議にすぐ参加でき、おかげで「Wow!」という場面にしばしば出会う。
 この半年間の私の国連での「Wow!」は、国際刑事裁判所を巡って2度、起きた。一つ目は、国際刑事裁判所への日本政府の寄託式。二つ目は、国際刑事裁判所の締約国会議(潘基文国連事務総長も拝んだ)である。(もっとも、何に一番感激したかというと、国際社会における、圧倒的なNGOの存在感である。頁数の関係でNGOについては次号以降)

■国際刑事裁判所(ICC:International Criminal Court)
 国際刑事裁判所とは、重大な人権侵害の責任者を裁く国際法廷である。東京裁判やニュールンベルク裁判の名前は耳にしたことがあると思うが、大戦後、人類は、「二度と過ちを犯さぬよう、重大な人権侵害の責任者には法の裁きを受けさせなければならない。」と悟った。しかし、ある国において、激しい殺戮行為が起きても、その一番の責任者はその国のトップであることも多く、往々にして国内での裁判にかけられることは少ない。国の中でやりたい放題であるのが常である(昨今のビルマがいい例)。しかし、責任逃れを許さず、続く人権侵害を止めねば!・・・ということで、ながーい検討の末・・・1998年、長年の人類の夢かなって、ついにICC規程が採択され、国際刑事裁判所が動き出した。裁判所はオランダのハーグにあり、裁かれる犯罪は、戦争犯罪、ジェノサイド、人道に対する罪、侵略の罪。


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*議場の様子。前に、国際刑事裁判所の裁判官選挙用の投票箱が並んでいる。

■日本の批准
 日本政府は、この輝かしい国際刑事裁判所のローマ規程になかなか批准しなかった。1998年にICC設立が決まったのに、60カ国が批准をして裁判所が実際に動き出しても、批准国が100カ国に達しても批准しなかった。米国が自国の兵士が訴追されてはたまらないと批准しないため、その顔色をうかがっていると言われていた。日本のNGOも、CICC(ICCのためのNGO世界連合:Coalition for the International Criminal Court)も必死で日本政府ロビーを行い・・・そして、やっと9年後の2007年、ICC関連法が国会を通過した。

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*投票する各国代表団

 私が、立ち会うことができたのは、続く、日本の加入書の寄託式である。
 2007年7月17日、NY国連本部内の署名室 (「signature」 という部屋)にて、大島賢三国際連合日本政府代表部大使から、国連の法務局条約課長への加入書寄託式が行われた。NGOからたくさんの人が来ており、記者もそろい、狭い会場は人でいっぱいであった。大島大使は、そんなに人が集まっているとは思っていなかったようで、びっくりしていた。
 国連のミシェル法律顧問が大島大使と握手をしながら、「日本は少し時間がかかったけど、日本みたいに批准までに時間をかけて国内法を整備する国と、全く何も国内整備をしないですぐ批准する国とあるけど、日本はしっかりと用意をする国だからこのくらい時間がかかったんだね。」 と、仕方ないね、というか、日本はしっかり準備をするちゃんとした国だね、というのか、少しばかり皮肉なのか・・・、自分で納得するように?話をしていたのが印象的であった。
 もっとも、その場にいて一番うれしそうにしていたのは、やはりずっと頑張ってきた世界各国のNGOの人々であった(次号以降に詳述)。CICCが、「日本のICC条約批准はICCの新たな幕開けを意味する」との声明を出したくらい、この加入書寄託の瞬間は輝かしい瞬間であった。
 それにしても、寄託式には人が集まり、日本への期待は大変なものであった。日本は実に大国である。条約に日本のような大国が入っていないことは、条約の価値をひどくおとしめる。日本政府は「お金ばかり出して人(軍)を出さないから国際社会でのプレゼンス(存在)が低い」とか嘆いていないで、もっとこういう分野で率先してリーダーシップを発揮すればいいのに、と私は思う。

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*ホンモノの加入書!

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*「寄託の瞬間!左の大島大使から右の国連法務局条約課長に、加入書を渡
している。真ん中が、国連ミッシェル法律顧問。」


■締約国会議(裁判官選挙)
 その約4ヶ月後の11月、ICCの締約国会議が国連本部で開催された。日本は、初の締約国としての会議参加となった。私は、日本弁護士連合会の一員(日弁連は国連協議資格を持つNGO)として会議に参加した。
  * * *
 空席となっていた3名の裁判官の選挙が会議の目玉であった。立候補者は5人。日本からは齋賀富美子さんが立候補していた。私は、齋賀さんを、齋賀さんが裁判官候補者になるまで知らなかった。そもそも名前が挙がった頃、まだ日本はICCに入っていなかったので、もっぱらの話題は日本の批准の可否にあった。
 議場でいきなり私によせられたのは、「どうなの、お宅の候補者?法律家じゃないらしいじゃん?」「日本にはICCに出せる法律家はいないわけ?あんた弁護士会からきてるんでしょ?」とのNGOや諸政府から非難の嵐。批判に驚いている私の勉強不足もはなはだしいが、しかし、言われてみればもっともな話である。斉賀さんは、外務官僚で、女性差別撤廃委員会の委員や埼玉県副知事を務めた方。現在は人権大使(今、外務省が「人権」というと、北朝鮮問題のことを指す・・・)。いろいろな伝聞の批判はここには書かないが、きわめて「官僚的な方」であるというのが総合評価のようである。CICCが候補者に行った事前アンケートに齋賀さんは答えなかったとのことであった(そのこと自体がかなり「日本」の「官僚的」)。
 結果的に、日本政府が政治力(資金力)を発揮して、齋賀さんはトップ当選を果たしたが、会場にいる数少ない日本人として批判をバシバシ食らっていた私としては複雑な思いであった(日本国内でICC認知度が上がるなど、いいこともあるとは思うが)。
 私のような、いわゆる国際人権畑の隅っこの立場からすると、女性差別撤廃委員会や国際刑事裁判所などは、人権のための組織なので、国際人権・人道に詳しい人が適任で、さらに国際裁判所は裁判所なのだから法曹関係者がいいのでは?せめて法律学者では?と思うのだが・・・しかし、これまでのアドホックな国際刑事法廷でも、国際人権・人道法で名前の知られる法曹・学者が選ばれたことはない。思えば、国際機関の人事は全て政府内部で決められている!!なんてことだ。国際機関の人事ってば、全く不透明に、政府の内部だけで決められていいとはとても思えない。
 政府内外から候補者を募り、国際法に長けた人材をストックし、機会があるごとに、オープンな形で有能な人材を世界に送り出していくべきではなかろうか。(注:この原稿の完成後、齋賀さんの後任の女性差別撤廃委員会の委員に、林陽子弁護士が民間から選ばれた!林弁護士は、名実共に、女性差別問題の専門家である。(私が現在所属する法律事務所(東京共同法律事務所)に以前所属していたこともある私の大先輩でもある!)これからも、民間からの採用が進むことを願ってやまない)
  * * *
 一般討議での各国からの意見表明では、大多数の国が「日本の批准を歓迎」と日本に触れた。改めて日本が大国であることを感じる。日本政府は、加盟国になった喜びを述べ、裁判官選挙のお礼を述べた。また、日本は、GDPに従いICCの予算の22%を分担することになる、(よって)より多くの日本の人材をICCに送り込みたいとの意思表明をした。世界各国が日本を歓迎しつつ、その影響力を恐れながら注視している。

■余談1 アフリカ紳士
 初日、議場付近のソファーに座りランチをしていると、黒人紳士がやってきて隣に腰を下ろした。ウガンダの方でボツワナ大学で教授をしているという。「私、アフリカに行ったことがあるんですよ。」から始まって、「僕の名前、日本語でどう書くの?」とか、しまいに、「日本では法律家でなくても裁判官になれるの?」「日本からの候補だから当選するね。」とか、一通り話に花を咲かせた。
 かなり話し込んだ後、その紳士が「君を驚かせるかも?」とおもむろに取り出したのは、裁判官立候補者紹介パンフ。真ん中には、どーんと彼の顔写真。
 Oh, my god!  彼は裁判官候補者であった。
 「これはこれは大変失礼しました。」
 国際刑事裁判所の裁判官など、おそれおおい、全くもって手の届かない存在なのに、私は、そんな裁判官に、彼の名前をひらがなでどう書くか、指導までしてしまった。(その後、彼は裁判官に当選した。)

■余談2 ポールさん 連日会議が続く中、ある日、エレベーターで一緒になった白人男性に声をかけられた。「あなた日本人?日本大好き!」とのこと。夕食に誘われ、突如、その白人男性・・・オランダ全権大使(!)のポールさんと二人でフランス料理を食べることに。在日大使館勤務の経験がある方で大変な日本通。しかし、ポールさん、靖国参拝の話から従軍慰安婦問題まで、屈託のない意見を聞かせてくれた(オランダも、アメリカ・カナダ同様、従軍慰安婦問題で、日本政府に対し謝罪をするように求める決議を今年出している。)。一国の全権大使がそんな政治的発言をしてしまっていいんだろうか、とか、小心な日本人である私は逆に心配してしまったり。日本の外交官はエレベータで会った女性を食事に誘ったりしないんだろうな、とか、食事の場での政治的発言は控えるんだろうな・・・とか、いろいろなことを思いながら、おいしくお食事をいただいた。

■余談のまとめ それにしても、日本政府代表団に近寄りにくいのは、私だけだろうか。うむ。私も身構えすぎなのだろう。

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                         (2008年「まなぶ」1月号掲載)

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世界一多様性ゆたかなこの街で・・・

猿田佐世

■カギ十字と首つり縄
 ここ1ヶ月、コロンビア大学で、人種間の憎悪を強烈に感じさせられる出来事が続いた。
 大学内のトイレの落書き。「アメリカはいつか立ち上がって、メッカ、メディナ、テヘラン、バグダッド、ジャカルタ、そして、アフリカの全ての野蛮な場所を核攻撃する。おまえら、皆、くたばれ。アメリカは白人のヨーロッパ人のための国だ」
 首つり縄が、黒人の教授の研究室のドアにかけてあるのが発見され、ユダヤ人教授の研究室のドアなど、学内にナチスのカギ十字の落書きが発見された。
 直ちに、学生は抗議行動を行い、学長から全学生に、「寛容と相互の尊重がこの多様なコミュニィティでは中心的な価値である。」「私たちは、一つのコミュニティである。一つのコミュニティとして、私たちは、これらの忌まわしい行為を克服し、全ての個々人の尊厳と多様性に、最高位の尊敬を払う。」とのメールが送られた。
 しかし、ことはNY市全体の問題となった。首つり縄が市内数カ所(9・11のグラウンドゼロの付近でも)で発見され、高校に人種差別の落書きがなされ、シナゴーグ(ユダヤ教の教会)にもカギ十字の落書きがなされた。また、黒人の高校の校長に、「白人の力よ、永遠なれ!」と書いた手紙が送りつけられた。
 NY市は、自らを寛容な都市(a city of tolerance、「多様性に対し包容力のある都市」といった意味)と宣言している。NY市は、これらの出来事を受けて、11月29日を「憎悪に反対する日(Day Out Against Hate)」と宣言し、コロンビア大学を初め、市内で、イベントを行うことを決定した。

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■人種のルツボNY
 NYは人種のメルティング・ポット(ルツボ)だと言われる。外国から来た人が、一番すぐに「外国人」でなく生活出来るのがNYだろう。日本から来たばかりの、全くの東アジア人の顔をした私が、現地のアメリカ人に道を聞かれる。買い物をしても、「あ、外国人がいる」という目で見られることは、まずない。世界中に源をもつ人が実にたくさん住んでおり、あちらこちらに民族地域が形成され、多国籍文化が育っている。有名なチャイナタウンやリトルイタリー以外にも、ギリシャ人街、ユダヤ人街等々、多くの民族がひしめき合って生活している。(ちなみに日系人社会は中国・韓国人社会等に比べてそれほど強くないと聞く。日本人は、第二次大戦時に「自分は敵国日本に属する者ではない。アメリカ人である」として、アメリカに同化する努力をしたという歴史があるからだそうだ。)

 夏には、毎週のように、各民族のイベントが開催される。今週末はドミニカ共和国パレード、翌週にインド人パレード、その翌週にブラジル人パレード、その翌日にウェスタンインディアン人パレード(カリブ海の西インド諸島)という調子である。普段はみな紛れて生活しているが、その日だけは、皆、お国カラーのTシャツに身を包んで、国旗を振ったり踊ったりしながら、「こんなにブラジル人って、たくさんいたんだ!」と思うくらい、大通りがそのパレードで埋め尽くされる。
 一度、ドミニカ人パレードの後、興奮冷めやらぬ一行と地下鉄を乗り合わせた。車内には、白人も黒人もいるが、大声で興奮したスペイン語が飛び交い、なにやら電車の後ろの方からガヤガヤした声が聞こえてきたかと思うと、10代の若者たちが20人も30人も、歌い、太鼓を鳴らし、踊りながら列をなして車両を移動して、ドミニカンダンスを披露していった。私の車両にいた他のドミニカ人も大喜びで、隊列に加わって次の車両に移動していった。
 その後、突然、車内放送で「ドミニカーノ!(ドミニカ共和国万歳!)」という雄叫びが数回とどろいた。なんと、彼らは車内放送をジャックしたのだ。これで地下鉄の中での盛り上がりは最高潮に達した。地下鉄自体がパレードの一部じゃないかと思うほど、ドミニカ人が自分たちの記念日を祝って、踊って歌って笑っていた。
 日本の地下鉄を、中国人が、中国を祝って踊り歌って・・・、ということを想像すると、NYという街の寛容さがよく理解できる。

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「ドミドミニカンパレードの宣伝ポスター@157ストリート駅にて」

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「ブラブラジル人パレードで、国旗をまとってブラジリアングッズを売る。」

■民族間の差
 もっとも、「メルティング・ポット」ではなく、「サラダボール」である、ともよく言われる。溶け合ってなどいない、というのだ。
 冒頭に書いた、大学や市内での差別事件は象徴的な出来事であるが、人種間の差別、そして、経済格差は著しい。

 この夏、ハンプトンという、NY州内の高級保養地に行く機会があった。ハンプトンは電車でマンハッタンから3時間弱の海辺の保養地である。NYの多くの富豪層(白人)が、巨大な邸宅を別荘として構え、そこで週末を過ごす。金曜の夜にマンハッタン付近から自家用機を飛ばしてハンプトンに向かい、週末を別荘で過ごす。ダンスパーティを開き、プール際に寝そべり、自己所有のボート(というより豪華客船)に乗って、リゾートライフを満喫する。そして、日曜の夜にマンハッタンに戻る・・・これが、NYのお金持ちの1週間の過ごし方だそうだ。洗濯やゴミ捨てなどしなくてよろしい。月~金の間に、有色人種の雇い人(ラテンアメリカ人もしくは黒人)がやってくれる。
 私がハンプトンに行ったときは、もちろん飛行機などないので車だったが、頭上を多くの自家用機が飛んでいった。
 アパルトヘイト廃止直後の南アフリカを訪れたことがあるが、当時、南アでは未だ黒人と白人の経済的格差が著しく、白人のプール付き邸宅の手入れに黒人が励んでいた。そっくりそのまま、今のNYにも、それと同じ風景がある。

■ハーレムの脇に住む私の生活 
 別荘地だけではなく、NYの中心でもその情景は変わらない。
 私は、157ストリートに住んでいるが、そこは、ドミニカンハーレムと呼ばれる地域である。
 日本人の思ういわゆる「NY」は、マンハッタン島という南北に細長い島のことを指すが、マンハッタン島においては大体の場所は、縦に走るアベニューと、横に走るストリートで簡単に説明できる。南から1ストリートで始まり、北上すると、街の中心が30~60ストリート、その後、100ストリート前後まで高級住宅街が続き、その後に125ストリートがくる。
 この125ストリートというのが、マンハッタン島を北と南にある意味大きく分ける通りであり、125より北は「ハーレム」と呼ばれる地域である。
 南北に走る地下鉄に乗って南から北上すると、125street駅までに白人が次々と下車し、125street駅を超えると車内の多くが黒人かラテンアメリカンとなる。私は、そんな地下鉄にそのまま乗り続け、125ストリートを超え、黒人ハーレムを過ぎ、スパニッシュハーレムといわれるドミニカ共和国やプエルトリコ出身の人の固まるラテンな地域に住んでいる。周りには日本人はほぼいない(私は1人も見たことはない)。
 125ストリートを超えると、世界は、はっきりと違う。まず、景色が黒ずむ(薄汚れると言ってもよい)。おしゃれな店、かわいらしいカフェはなくなるし、黒人やラテンの若者が街にたむろしていて、夜になれば少し怖い雰囲気も漂う。
 「157に住んでいる」と友人に言うと、まず「危険じゃないの?」「大丈夫?」「なんでそんなところに住んでるの?」という質問が返ってくる。先日など、日本人留学生の間で、「猿田が終に疲れて、引越したらしい」という噂が流れたくらいであった(いや、快適に住んでいる)。
 実際は犯罪率も下がり、生活自体は危険なこともなく、人々は明るく、のんびりしていて、私が引っ越してきたときには、皆で引っ越しパーティをやってくれたくらい素敵な人々が集っている地域なのだが(そんなことは、125ストリートより南ではまずあり得ない)、その街で見る格差たるや、悲しいものがある。
 一番ショックだったのは、スーパーマーケットである。簡単には、新鮮な野菜や、おいしいパン、いい質の肉が手に入らない。白人の住む地域と同じ高品質の物(日本中どこでも手に入る質の物)が手に入らない。これが、アメリカか?と思うくらい、物が貧相である。
 私は、それに気づかず、しばらく「アメリカってば、こんなものか」と生活していたが、ある日、学校帰りに、125ストリートより南のスーパーに行って、軽くめまいを覚えた。全く品揃えが違う。24時間いつでも、焼きたてのおいしいパンやローストチキン、多くの種類の新鮮な野菜や肉が手に入る。私自身が差別にあっているようなやるせない気持ちである。
 もっとも、大学のジンバブエ出身の友人(黒人)から、「この前ハーレムに行ったら、黒人から『アフリカ人はアフリカに帰れ!』と罵倒された」と聞いた。差別の構造は、自分よりも下を作ることで安心をする、のだろう。
(経済格差と人種差別は少し問題が違うのではあるが、しかし、NYの経済格差は、人種毎になっている現実がある。)

■悩み深く・・・
 NYでは、人種のことについて表だって口にすること自体がタブーになっていると、ロースクールの憲法の授業で教授が話していた。
 各民族の文化も守られるべきだから、「メルティング・ポット」ではなくて「サラダボール」でいいだろうが、民族間の不合理な差別・格差をなくし、うまく混ざったおいしいサラダになる方法はないのか・・・。
 つらつらと、私の身の回りの出来事をつづってみたが、多くの人が数世紀にわたって頭を痛めてきた問題の解決方法など、私に思いつくすべもないし、問題の全体像すら把握できない・・・。それでも、人種について毎日考えさせられる日々である。NYでは、みなが、常に、根底にこの問題を抱え、それぞれの方向で悩み考えているような気がする。

 もっとも、日本の状況に照らしてみると・・・「教授の研究室に首つり縄なんて、アメリカの学生はなんて過激!?」って、思います?
 日本では、東京都知事が、公に、堂々と、中国人や韓国人を「三国人」(激しい差別用語)と呼び放ってしまうのですよ。
 包容力など、ないよね。仮に、在日中国人が、例えば、東京・銀座の目抜き通りを、半日車両通行止めにして、「中華人民共和国成立記念日」パレードができる・・・はずもない。もし、そんなことを試みようものなら、今の右傾化した日本社会では、一人や二人中国人が殺害されてしまいそうである。
 「寛容な日本の日」を作るって、どう?

(2007年 「まなぶ」 12月号掲載)



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写真・「同じブロードウェイの110ストリート付近。高級住宅街の一角であり、スー
パーの品揃えも豊か」

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祭(大騒ぎ)の後で・・・157ストリート駅にて笑顔のドミニカン一家

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「私の住む157ストリート付近の町並み。ラテンアメリカな雰囲気」

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「これでもかというアメリカ国旗の山・・・の中でスケート。ロックフェラーセ
ンターにて」

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イラン大統領が大学にやってきた!!!!


弁護士猿田佐世

 アメリカの一番の嫌われ者が大学にやってきた!

 今、間違いなく、(ビンラディンを除けば)アメリカ人に一番嫌われているのはイラン大統領アフマディネジャドである。

 私の通うコロンビア大学には、毎年9月の国連総会の時期、NYの国連本部にやってくる各国大統領が何人も来校して講演をする。学生も慣れたもので、授業の合間に覗いては楽しんでいる。
 しかし、今回のイラン大統領の来校は、訳が違った。
 一瞬で入場券が無くなったと思ったら、招致反対派から興奮したメールの山。「そんな悪者を呼ぶな!」「世界中からコロンビアが大統領支持だと思われてしまう!」「反対行動に参加せよ!」大学からは冷静な行動の呼びかけ。とともに、大学は学びの場であり反対者とも議論をすべき云々の声明が発表される。ロースクールの学生議会も声明を出すべく緊急会議を開いたが、意見がまとまらず。その後も多くのメールが大学中を飛び交い、講演参加希望者が殺到して、大学はアウトドア・スクリーン設置を決定。

■イラン情勢(アメリカ情勢というべきだと思うが)
 実は、大学は、昨年も大統領を招致したが、あまりの反対意見の多さに招致を撤回したという過去があるらしい。何でこんな騒ぎになるのか。
 要するに、イランが核開発を行っていて、アメリカはイランの核兵器保持を止めたいという図式である。アメリカは、イランを次の攻撃ターゲットとしているから、この図式に、イランの多くの人権侵害状況がぶら下がる(イラク・フセイン政権でもそうであったように)。反政府活動家の長期拘禁、女性の人権の蹂躙、ホモセクシャルの死刑など、様々な指摘がなされる。加えて、イラン大統領がイスラエル批判を強めており、ナチスのユダヤ人虐殺に疑問を投げかける発言をしたため、ユダヤ人が政財界の権力を占めるアメリカでは、批判が瞬く間にエスカレートした。
 この世論を喚起し攻撃準備を進めるアメリカ政府の姿勢に対し、「二度目のイラクを出すな!」との反対の世論も高まる。
(ちなみに、昨年の国連来訪の際には、イラン大統領がブッシュ大統領に会談希望を伝えたが、ブッシュがそれを無視している。)

■フリースピーチ
 9月24日当日、私はデジカメを買いに走り、大学に駆けつけた。案の定、普段は静かなキャンパスが、大変な人だかりであった。
構内に入るのを学生に限り、警察にIDを見せねば入構出来なかった。門の外では人々が抗議行動を行っていた。「アフマディネジャドはイランの真の代表ではない!」というバナーを掲げて抗議をする者、ブルカを被ったイラン女性の格好をして「女性の人権を確保せよ」と抗議をする者、イスラエルの旗を持って抗議をする者、それらの者に対して「戦争は解決方法ではない、会話が必要だ」との看板を持って対峙する者・・・。その対峙の横を、「フリースピーチ!フリースピーチ!」と大きな声で通りすがる者があり、その者に対してデモ隊が怒鳴り返して、一触即発状態・・・。
 キャンパスに入ると、そこら中にチラシやポスター。イランでの死刑や拷問の被害者の無惨な写真、「この大統領はホロコースト(ユダヤ虐殺)は神話だと言った」とのポスターから、ブッシュ批判・戦争反対のチラシまで、その主張は見事に様々な方向からなされていた。
 さっそく学生のラリー(公開討論会)を見に行った。ユダヤ人の学生サークルが「大統領も許し難いが、招致した学長も同罪だ!」と大声を張り上げ、コロンビア大学共和党(こんな学生サークルまである)などもそれに続いた。反対意見ばかりが過激に展開されるかと思いきや、同じく学生サークルのアムネスティ・コロンビアやACLU(人権団体American Civil Rights Union:日本にも姉妹組織のJCLUがある。)なども登場し、「大学はフリースピーチの場である。」「大学の勇気に感謝する。」との意見を述べていた。

■学長の講演と大統領の講演と
 そして、いよいよ講演である。世界中のメディア(NHKも来ていた)が殺到し、警察が学校の周りを警備し、空にも警察のヘリコプターが旋回しての講演となった。何千と学生が集まり、キャンパスは興奮に包まれていた。
 講演は、まずホストのコロンビア学長の挨拶から始まった。が、これが、すごかった。イランバッシングを大展開。「なぜ、テロリストを支援するのか。」「あなたはイスラエルは存続すべきでないと言ったが、コロンビア大学はイスラエル人の卒業生を多数排出し、イスラエルと強いつながりを持っている。コロンビア大学も消え失せろと言うのか。」しまいに、大統領を「つまらない冷酷な独裁者(petty and cruel dictator)」と言ってのけた。一国の大統領を招いておいて、ここまで侮辱するかという内容に、学生の半数はその度に沸き拍手喝采であった。大統領でなくても、「私は招待されてやってきたゲストだ。イランではゲストを呼んだときはゲストを尊重する。」と言いたくなる状況であった。
 大統領の講演はこれへの反論の形となった。内容は、それまで耳にしてきた報道に比べて、きわめて丁寧であった。ホロコーストの点も「さらなる事実の検証を行うべきと言っているだけ。」イスラエルについても、「言いたいのは、パレスチナ人もユダヤ人も自由な国民投票で自分たちの将来を決められるようにすべきである、ということ。」等と答えていた。オブラートに包んだ物言いもあり、時に、直接の回答を避けたところもあったが、冷静な対応は少なくとも血の気の上った学長よりは心に訴えた。先ほど拍手がまばらだった残りの半数の学生は、大統領のアメリカ・イスラエル批判に沸き、興奮の拍手を送っていた。
 その後、学生の質問が続いたが、その質問が何ともストレートで非建設的であった。「イスラエルを滅亡させるつもりですか、YESかNOかで答えてください」「なぜ核兵器作成が可能な開発を続けるのですか。」

■つるし上げ?
 概して、イスラエル人とアメリカ人以外の感想は、大統領の前に学長がなぜそんな侮辱的な挨拶をしたのか、ということに尽きた。講演会は、大統領をつるし上げる会と成り下がっていた。ニューヨークタイムズによれば、イランではこの講演は「大統領の完全勝利!」と報道されたようだが、全くその通りであったと私は思う。イスラエル人とイスラエル支持派のアメリカ人は、頑なに「イランはやっぱり許せん」と、講演の前後でその興奮の態度に変化はなかったけれど。
 次の日の国際政治学の授業では、真っ先にこのことが話題に上がり、「なぜ学長があの態度を取ったのか。」という質問に対し、大統領招致担当の一人であるマイケル・ドイル教授(前国連事務総長コフィ・アナンの顧問)は、「招致した大学への風当たりが強すぎ、あのような導入をせざるを得なかった」と解説をした。NYはユダヤ社会が強い。本来、コロンビアはリベラルで知られ、今の学長も比較的リベラルであると聞く。その学長にそこまで言わせたアメリカの世論とは・・・。

■表現の自由への尊敬の念
 私は、この講演を友人2人・・・インド人の学生(少数民族のために戦っている弁護士)と、ジンバブエ人の学生(腐敗政権に対して裁判を次々起こし、故に脅迫を受けて国を逃れてきた弁護士)と聞いたが、インド人の学生が、「アメリカの好きな点はほとんど無いけど、この表現のフリーマーケット(自由市場)については本当に尊敬する」とぽつりと言ったのが、強烈に耳に残っている。
 それは本当にすばらしかった。大統領来訪が決まり、キャンパス中が議論をし公開討論会で様々な意見が飛び交う。チラシを作りメールを送って他の者に働きかけようとする。当日も、一言一言に賛同の意や反論の意を体中で表す。イランに対する意見はもちろん、自国米政府の政策にもはっきりと意見を持ち、意見を戦わせる。キャンパス中が、「フリースピーチのマーケット」であった。
 これは、この日に限ったことではなく、常に、何か政治議論が話題にあがれば、学生はひとしきりそのことでの議論を楽しむ。
 アメリカでは、みなが表現の自由を謳歌し、法・政治的にも、「表現の自由(合衆国憲法修正1条)」を、憲法上保障される権利の中でももっとも神聖なものとして取り扱っている。現政権には重大な問題があるが、「表現の自由」がアメリカ人のプライドとして根付いている事実に間違いはない。

■疑問
もっとも、この感激にもかかわらず、私は、アメリカに対する苛立ちも強く感じていた。
 イラン政府に非難されるべき点があるのは事実であろう。が、学長による激烈な冒涜と、アメリカ人の異常な興奮ぶりは、いったい何なんだ。
 「あなたたち、イランの何様?」
 「何をどこまで知ってて、そこまで言ってる?」
 どうして、みんなして、他国のことに、反対意見を言う者につかみかかろうとする程までに必死になるのか。意見を交換する姿は心の底から羨ましく思う。怒りを抑えて考えてみると、アメリカ(というよりNY)は多民族国家なので、イスラエル人も反イスラエルの中東の人々も多く生活している。イラン人もいる。彼らはまさに当事者意識で問題に取り組む。だから、皆、真剣になるのだろう、とは思う。世界中の問題の当事者がアメリカには存在する、のだろう。だからアメリカではどの国際問題についても、みな当事者意識を持つ、のかも知れない。かなり遠慮がちな見方。
 いやしかし、当事者であればもう少し生産的な会話をしたらどうだ?質疑応答からも明らかであるが、意見の違いが平行線で交わらない。何も産まない。発言者もその場が何かを産むことを期待していない。歩み寄り、折衷、解決という姿勢は全くない。
 アメリカ人には、「世界中のことは自分たちが全て決めてきたし、それで世界の流れは決まってきた」という意識が根付いている。イラクの時も、結局、好きなだけ議論して、数の論理で制圧して爆撃を始めたのだろうと、容易に想像できた。
 十分な保険に入れず医療が受けられない人が4千万人もいる国。
自分たちの問題の解決策をもっと生産的に考えた方がいいんじゃないか?
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(2007年 「まなぶ」
12月号掲載)

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ニューヨークより、猿田です。

ニューヨークより、猿田です。
   
日本では、ついにこの5月、改憲手続法(国民投票法)が成立して
しまいました。私は、つい先日まで、日本で、国会審議を続けて傍聴し、
国会議員ロビーイングに足を運ぶ日々を過ごしていましたが、改憲手続法
成立後の現在、その悔しさから立ち直るべく(?)、ロースクールで学び
直そうと、2年間のNY生活を開始しました。
   米国はイラク戦争を続けており許しがたい国ではあるけれども、そ
の他方で、多民族の共生を認め、意見の多様性を認める国でもあります。
市民社会が活発に動き、デモがあれば数10万人が街に繰り出します。今、
私は、マンハッタン北部に住んでいますが、ここは、電信柱にドミニカ共
和国大統領選挙の候補者ポスターが貼ってあるような、スペイン語しか話
さない人ばかりが住んでいる地域です。
   在米中に大統領選挙もあります。選挙1年前にして、既にテレビで
大統領選の話を聞かない日はなく、連日、大統領候補者の討論番組が流れ
ています。
   安倍元首相は、米国を民主主義の友人の国と豪語して疑わなかった
けれど、それはいったいどんな国なのか。
   これからしばらくの間、肌で感じたことをお伝えします。

■原爆記念日をNYで過ごす
   8月、NYで原爆投下記念日を迎えたが、色々な新しい動きがあっ
た。まず、被爆者の記録映画、「WHITE LIGHT, BLACK RAIN(邦訳
「ヒロシ
マナガサキ」):スティーブン・オカザキ監督」が、テレビ放映された点
があげられるだろう。被爆証言と、爆撃に関与したアメリカ人の証言を軸
にする記録映画であるが、こちらの人から聞くには、制作費を出し映画を
放映したのは、4000万世帯の加盟するケーブル局だそう。NYタイム
ズでも紹介され、反響を呼んでいる。
   日本でも、東京・岩波ホールで9月末まで上映されているが、同監
督は日系3世で、「はだしのゲン」に刺激を受け、広島・長崎の取材を続
け、日系人強制収容所を描いた作品「待ちわびる日々」(91)ではアカデミー
賞ドキュメンタリー映画賞受賞、胎内被爆の現実にも迫った「マッシュルー
ム・クラブ」(05)ではアカデミー賞にノミネートされている(岩波ホール
HP)。
   1995年、スミソニアン協会で開催予定だった原爆展が、米国内
の猛反発で中止になったことはあまりに有名だが、その際、彼の映画展示
も中止となっている。そんな中で、今回、この映画がテレビで放映された
という事実は、大きな一歩であったろう。(その後、この映画がアカデミー
賞にノミネートされるかも、との話を耳にした)

   他にも、私の知る限り、NYで原爆や戦争をテーマにした映画や音
楽・舞踊などの平和映画祭が行われ、長崎市と姉妹都市であるセントポー
ル市で長崎の女子高校生らを招いた平和祈念式典が初めて開かれるなど、
各地で、それぞれの取り組みがなされていた。

   私は、8月9日、NYの国連近くで開かれたNGOピースボート主
催のイベントに足を運んだ。ARTICLE9(9条)の文字が掲げられ、続々と
9条を守ろう!という署名が集まる中、日本政府国連代表部の公使が平和
を誓い、長崎市長からの手紙が読み上げられ、多くの日本の若者がNY市
民の前で平和を願って踊るそのイベントは、大変印象深い光景であった。
   日本では、私は、いわゆる「護憲運動」の端っこにいたのだが、そ
こでは、常に、どうやって運動を盛り上げるか、ということがテーマになっ
ていた。そのため、渡米前の私は、迫力ある米国の平和運動に期待をし、
学び取ってこようと勇んでいた・・・が、その日、集まった多くのアメリ
カ人に、「今の米国の平和運動はどうなっているの?」と聞いたところ、
逆に、口々に、「日本はすばらしい!核廃絶の分野で、圧倒的に世界を引っ
張っている!」と絶賛され、うれしいような、歯がゆいような。ついでに
書けば、「アメリカでの平和運動は若者離れが進んで、なかなか広がらな
い」というセリフを多くの人から聞いた。どこもみな同じなんでしょうか
ね。
   とはいえ、一つイベントをやるにもスケールが違うし、そもそもN
Yで誰に話しかけても、政治問題について賛否いずれにせよ意見がしっか
り返ってくる・・・など、やっぱり日本とは違う側面もたくさん。これか
ら、しっかりと、その違いを見て、盗めるところは盗み取ってきたいと思
う。

■序 ~NYに出発するまでのわたし
   さて、今回は、自己紹介がてら、この間の改憲手続法について動い
てきた体験と、私の憲法運動についての考え方とをご紹介したい。
   2007年前半、私は、毎日のように、国会に足を運び、改憲手続
法(国民投票法)の審議速報をメルマガで流し続けた。半年前まで、国会
傍聴の方法も知らなかった私であったが、終に、改憲が政治日程に上がっ
てきてしまったという焦りと情報不足の焦りから、これは、もう自分で傍
聴して発信するしかない、と、国会に足を運んで傍聴し、その様子をメル
マガやU-TUBEでネットに流した。傍聴では、あまりの「国会常識」
の非常識さに、何度も腰を抜かしそうになった。詳細はメルマガをご覧頂
きたい。(全文はHP「News for the People in Japan」に掲載
http://www.news-pj.net/kenpoushingi/index.html )。
   日本国憲法は、改正について、96条で国民投票での過半数の賛成
を必要としているが、これまでその具体的手続が決まっていなかった。そ
こで、今回、手続きの制定が憲法改正派から求められ、法案が提出された。
   改憲派の改憲の主たる理由は、戦争および武力の放棄を謳った9条
を変えるところにある。また、「今の憲法には権利ばかりが書いてあって、
義務がほとんど無い。だから我が侭な国民が増えて凶悪事件が起きるんだ」
と政治家が平然と述べる極論に象徴される権利の制限と責務の創設である。
   しかし、憲法とは、国民から権力を預かってその国を治める者たち
の、その権力が濫用されぬよう縛るために存在する。従って、権利ばかり
が規定されていて当然である。
   にもかかわらず、現在の改憲議論は、憲法がいかなる存在であるか
を理解しない権力者によりリードされており、その議論の中心に国民はい
ない。
   そして、今回の改憲手続法の審議も、「国民不在」のものであった。
   慎重審議を求める野党を尻目に、安倍首相の「なんとしてでも5月
3日までに」とのかけ声の下、大変短い審議だけで、公聴会も十分に行わ
ずに、怒号が飛び交う中(衆議院)、強行採決がなされた。裁決時には、
その傍若無人さに泣いている傍聴者も少なくなかったが、他方、議場の少
なくない議員は、裁決直前まで、おしゃべりを楽しみながら、議長に求め
られた瞬間、採決に必要な3回の起立を繰り返して、その後、次の用事に
足早に去っていった。
   国会素人、政治素人の、私には全く理解できない、国会であった。
強硬に進められたこの審議からは、このままでは憲法そのものの議論も
「国民不在」でなされるに違いないことを確信する。

   成立した法律には、大きな欠陥がある。
   一番の問題は、「最低投票率」の規定がないことである。例えば、
投票率が40%であれば、全有権者の21%で憲法が変わってしまう。憲
法96条は改正に国民の承認を経ることとしているが、国民の21パーセ
ントの賛成では国民の「承認」とは言えない。
   また、テレビ・ラジオの有料広告が垂れ流しになって、金のある者
の誘導で「憲法を金で買う」ことになってしまう(投票前14日以外は完全
にCM自由)。
   また、公務員・教員の表現の自由が規制されている。君が代斉唱時
の不起立で処分され続ける教師達は憲法について発言することでさらに処
分が続くだろうし、さらには大学の憲法学者までも処分の可能性が出て来
た。萎縮効果も著しい。
   他にも、広報を担当する広報協議会が改憲派ばかりで占められる、
発議からたった60日後には投票させられてしまうかもしれない、など、
多くの問題を含んだ法律が成立してしまった。
   このままでは、偏った情報だけが一部の国民に流されて、反対する
者は職場解雇されたりしながら、憲法があっという間に変わってしまう、
ということになりかねない。まさに「国民不在」である。

   さて、これから、どうするか、である。

   まずは、国民主権を取り戻すべく、手続法の修正を求めなければな
らない。
   第2には、国会に新設される憲法審査会を監視し、多くの先延ばし
にされた論点、~例えば、公務員・教育者が行えない活動の定義、一票の
投票対象となる「関連する事項」とはどのようなくくりなのか、という点~
などについて、公正な議論がなされるか注視せねばならない。
   第3には、国会に憲法改悪発議をさせてはならない。各議院の3分
の2が賛成しなければ発議はできない。自分の一票が憲法改正に影響を与
える一票であるときちんと理解をして投票をしたい。
   最後に、仮に国民投票が実施された場合、過半数を確保するだけの
声を作るということである。
公平な法制度が整っていない以上、国民投票をする日が来ることは望まし
いことではないが、仮にそうなった際のために、国民の声を盛り上げてい
かねばならない。
   中心には、憲法を変える必要はない、憲法を活かすことこそ必要だ、
という世論作りがある。今動かなければ、この国の、民主主義も立憲主義
もみんな破壊されてしまう。とにかく皆、声を上げよう。

   この間メルマガを流し続けたが、多くの方に「貴重な情報をありが
とう」と言って頂き、国会には、毎日、「メルマガを見て来ました!」と
いう方が大勢いらしていた。私がしていたのは、国会を傍聴してその様子
をメルマガで流したことだけである。にもかかわらず、そんな言葉を頂け
るのだから、私たち1人ひとりがやれることは、山のようにある。

■これから
   とまあ、このような感じで、動き続けた日本の生活であった。
   アメリカでは、自主的に動くのは、知り合いも少なく、地理にも不
案内でなかなか難しい。しかし、民主主義の生まれた国アメリカで、腰を
据えて憲法や国際人権法を学びながら、あちこちに顔を出して、色々体験
してみたい。
   出国間際、先輩弁護士から、「日本で活動するより、アメリカで政
府が動かす方が9条を守る近道かも・・・」とまで冗談交じりに言われた。
超大国アメリカ。
   憲法問題が、一番大事な局面にあるこの時点で2年間も日本を空け
ることは一面歯がゆいが、憲法・人権・民主主義の視点から、日本に一番
の影響を与えるこの国が、どんな姿を持っているのか、自分なりに見て、
聞いて、感じて、発信を続けて行きたい。
(2007年「まなぶ」11月号掲載) 
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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.43(07/05/14)

(以下、ぜひ転送お願いします)
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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.43(07/05/14)
 <国民不在の国民投票法(憲法改正手続法)>~ 弁護士 猿田佐世 ~
----------------------------------------------------------------------
★★★★★★★★
  ●5月14日11時58分ころ、憲法改正国民投票法成立してしまいました。
                          ★★★★★★★★

取り急ぎご報告。
詳細は追って。

●このメルマガの過去ログはこちら
→ http://www.news-pj.net/kenpoushingi/index.html
憲法改正国民投票法についての詳細は、上記HPのほかに、下記もどうぞ
→ http://web.mac.com/volksabstimmung/
携帯でこのメルマガを見たい場合は携帯からこちらにアクセス
→ http://www.news-pj.net/kenpoushingi/i/
(12:08)

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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.42(07/05/14)

(以下、ぜひ転送お願いします)
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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.42(07/05/14)
 <国民不在の国民投票法(憲法改正手続法)>~ 弁護士 猿田佐世 ~
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★★「付帯決議」特集 AND 「集まれ!」特集★★★
  ●付帯決議がこんな(18個)についてる法案は・・・?
   付帯決議って?どういう意味があるの?↓
  ●これからへつなぐ大きな大きなステップを!
                          ★★★★★★★★
■集まれ!この法案では最後のチャンス!
「ねえ、お父さん。あの時何もしなかったの?」「・・・。」
何もしないで将来悔やむよりも!一回くらい行っといた方がいいかもよ?!
・・・この3ヶ月、私たちの憲法のための運動が活発になってきています。これ
からへのいいステップがいろいろ準備されています。ぜひお越しください。
「タイトル」[主催者](最寄駅)
●「STOP!改憲手続き法」
 5月14日(月)午前10時に参院議員会館前(永田町・国会議事堂前)
         午前11時からの参院本会議を監視する行動
●「STOP!改憲手続き法」
 5月14日(月)12:15~13:00参議院議員面会所(永田町・国会議
事堂前) 以上、[5・3憲法集会実行委員会(03-3221-4668)]
●「国民主権を踏みにじる「改憲手続き法」強行抗議!憲法闘争の一大強化をめ
ざす5・16中央決起集会」
5月16日(水)12:30~13:20 集会
13:30~国会請願デモ 14:00~16:00 国会前座込み行動・議員要請
場所:日比谷野外音楽堂(霞ヶ関・日比谷)
●こちらもどうぞ。「イラク特措法は廃止を! 自衛隊はイラクからすぐに撤退
を! 5.16緊急院内集会」にご参加を(永田町・国会議事堂前)
5月16日(水) 16:00~18:00衆議院第一議員会館 第4会議室
原口一博議員(「イラク特措法廃止法案」提出者/民主党テロ防止・イラク支援
特別委筆頭理事)他、共産党・社民党・国民新党の各議員

■付帯決議特集
●参議院委員会で可決された法案は、付帯決議だらけ
なんと、18項目。付帯決議としては、最多記録。郵政民営化法案は、これより少ない15項目だったが、それでも「非常識」という声があがっていた。
付帯決議はこちら → http://www.annie.ne.jp/~kenpou/futaiketsugi.pdf

●「付帯決議って、なんだ?」教えていただきました。

『附帯決議とは、国会の委員会がその法案(たいてい政府提出の法案)を議決す
るに当たり意見や希望を表明するもの。条文を修正するには至らなかったものの、
これを附帯決議に盛り込むことにより、その後の運用に国会として注文を付ける
といった態様のもので、国会で法案を採決するときにつけられているもの。
法案には賛成するけれども、こんなことに気をつけなければダメだよ!という要求書のよ
うなもので、「法案に賛成するに当たっての条件」のようなものと考えることもでき
ます。

また、附帯決議とは、審議内容を振り返って、特に重要と思われる事柄を文書
として確認することで、立法府である国会の側、特に野党の立場から、「法案には賛
成するが、審議で指摘したことは、きちんと守ってください」と、行政府である政府
への「注文」を文書にしたものともいえます。

つまり、本来、附帯決議とは,本来野党が与党の法案に賛同する条件として法律
施行時に取り組むべき課題を付記するもので、法案審議の過程で明らかになった問題点
について、主に野党側が懸念を表明し、政府に慎重かつ確実な対応を求めるもので、
法案提出者が附帯決議を提出して採択するというのは、極めて異例です。

そんな不安だらけの法案は、欠陥法案であり、再度、内容を検討して、法案を出しなおすべきだ
との主張が正論です。しかも数の多い附帯決議ほど、悪法であり、審議の未熟さを示
しています。今回の附帯決議にある「努める」っていうのも、だれが? 立法者なら
結論を出して法律を作ればいいじゃないか! 

もし今後の足がかりを残すのであれば、法律案を通す条件・政府への注文という
附帯決議ではなく、一段上の立法者の意思を示す、格調高い「単独決議」(委員
会決議)にすべきでした(正式には、○○に関する件)。例えば、議員立法である海洋基
本法案の場合は、附帯決議ではなく、「新たな海洋立国の推進に関する件」という委
員会決議が行われています。                       』

なるほど。。。。。
確かに、この付帯決議を見ると、いかに、この法案が欠陥ばかりと宣言している
ようなものです。民主党も、こんな付帯決議をつけることで手を打ったのは「談
合だ」と言われても仕方ないかも・・・(民主党は法案に賛成したわけではない
けれど、衆議院であんなに揉めたのに、参議院では・・・)。

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(01:05)

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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.41(07/05/13)

(以下、ぜひ転送お願いします)
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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.41(07/05/13)
 <国民不在の国民投票法(憲法改正手続法)>~ 弁護士 猿田佐世 ~
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★★★★★
●14日、午前11時から本会議
●本会議は、数の力に圧倒される、が、
一度、見に行くことをお勧めします。
何も理解していない議員が、採決の一瞬だけ私語を止め、一斉に立ち上がる姿を。
私たちの、これからのパワーが沸いてくるから。
                           ★★★★★★★★
●14日11時~12時。本会議の傍聴に行こう!!!
参議院の本会議傍聴は次の通り(参議院HPより)。
「参議院の本会議は、原則として、自由に傍聴することができます。
 傍聴を希望する方は、本会議開会当日、傍聴受付窓口(参議院別館議員面会所内)までお越しください。開会時刻の30分前から先着順に傍聴券を交付いたします。」

傍聴を希望される方、あまり傍聴券の枚数もないようなので、早めにおいで下さ
い。私も、見すえに行ってきます。

●以下、11日、改憲手続法が採決されてしまった委員会の傍聴記
メルマガ読者の方から投稿お寄せいただきました!
なお、11日の傍聴は、170人!!関心の高さが伺えます!!!

■あんたは「船田か?!」

澤議員(公明党)は、するどい。
「民主党は有効投票率が必要だと、再三、この場で与党を問いつめたのに、なぜ、有
効投票の定めがない修正案を出したのか」
答える、民主党、小川敏夫議員は
「有効投票率を定めますと、ボイコット運動を招くなど懸念され・・・」
船田議員から聞いたような台詞を
民主党議員から聞くとは思わなかった。
これには、民主党議員すら苦笑する始末。

■「いったい何様なんだ!」

議事も終了に近づいたころ、自民党桝添氏が委員長席に何か言いにいったと思った
ら、傍聴人に注意せよと告げ口。
自民は傍聴席から一番離れた右側を占めており、
左側を占める野党席からのヤジの罪を、傍聴人に着せたようだ。

衛視さんが、視界を塞ぐように立ったことに、
傍聴人が視界を空けるように声を出したことを機に、委員長が注意。
「傍聴人はさわがないように」というような、これも失礼な注意なのだが、
「さわいでないじゃない」という傍聴人の声に
桝添氏は「騒いだだろ!」と恫喝の声を荒げた。
「何様のつもりよ!」と誰か言い返して欲しいところだったが、
そこまで、傍聴人は議員ほど品が悪くなかった。

「ぜひ、ご静かにお願いします。」と言うならともかく、
一体、この人は、国会議員をどういう立場だと思っているのだろう。
自分たちが国民より「上」と思っている本性を、議場で垣間見るとは。

自らが「指導者」であると思いこんでいる人たちが、
国民投票法案を推進してきたことを肝に銘じたい。
終了後、傍聴人から「今度の選挙で落としてやるぞ!」の声が上がった。

(本当にそうなんですよね。国会議員の事務所に電話すると、大変丁寧に対応し
てくださる事務所ももちろんありますが、「あんた何様のつもり?!」って怒鳴
りつけたくなる事務所も少なくない。今度、議員名挙げてリスト作ろうかしら。
議員って・・・だんだん、感覚狂ってくるんじゃないかしら)

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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.40(07/05/11)

(以下、ぜひ転送お願いします)

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憲法審議ってば、今どうなってるの?国会速報No.40(07/05/11)

 <国民不在の国民投票法(憲法改正手続法)>~ 弁護士 猿田佐世 ~

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★★★★★

 17:50ころ 参議院憲法調査特別委員会で可決

                       ★★★★★★★★

●速報

付帯決議が付けられて憲法改正手続法、参議院憲法調査特別委員会で可決。

17時50分頃。

14日本会議にかけられる。

詳細は追って。

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(18:11)


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